小鍛冶 邦隆(著/文 他)
四六判 180頁 並製
定価 2,420円 (内消費税 220円)
ISBN978-4-903951-36-2 C1073
在庫あり
奥付の初版発行年月 2010年10月 書店発売日 2010年10月26日 登録日 2010年10月04日
大作曲家たちが受け継いできた「知の記憶(メモリア)」とは? 西洋音楽を制度として移入した日本において、作曲家たちはどこに必然性を見出しえたのか? 隠された音楽の秘史を暴く! 音楽学者・沼野雄司氏との対談を収録。
現代日本作曲界随一の知性として知られ、東京現代音楽アンサンブルCOmeTを率いての旺盛な演奏活動や東京藝術大学准教授として後進の育成にも尽力してきた作曲家・小鍛冶邦隆が、名著『作曲の技法──バッハからヴェーベルンまで』(音楽之友社)に続いて世に問う著書第2弾。
バッハからウェーベルンまでの作曲技法を理論的に分析した前著に続き、本書では「作曲」という行為をとおして作曲家たちが営々と受け継いできた「知の記憶(メモリア)」を明らかにする。
バッハからメシアンまで、クラシックの名曲のなかに秘められた「知の系譜」が露わにされる様子は、まさに圧巻。
最後の3章では、ヨーロッパ音楽を制度として移入した日本において、作曲家たちがなにと苦闘し、作曲の必然性をどこに見出しえたのかが跡づけられる。
巻末には音楽学者・沼野雄司氏との対談が収載され、前衛とアカデミズム、現代日本の作曲界を覆う病理など、さまざまな問題が暴き出される。
2008年4月から12回にわたってアルテスパブリッシングのウェブサイト上で展開された連載「音楽・知のメモリア」を単行本化。
序
1─セバスティアン・コード(1)〈J.S.バッハ〉
2─セバスティアン・コード(2)
3─セバスティアン・コード(3)
4─ア・ヴォルフガング・クライシス〈モーツァルト〉
5─テロリスト・ルードヴィッヒ〈ベートーヴェン〉
6─悔悟する二人のペテロ〈シューベルトとチャイコフスキー〉
7─夢みるクロード〈ドビュッシー〉
8─モーリス! 不能の愛〈ラヴェル〉
9─知の継承をめぐって〈メシアン〉
10─前衛とアカデミズムという擬態〈日本戦後音楽史①〉
11─西から東から〈日本戦後音楽史②〉
12─汎アジア主義というエキゾティズム〈日本戦後音楽史③〉
付録─ドゥーブル・レゾナンス〈武満徹の音楽〉
対談─音楽の知とはなにか〈小鍛冶邦隆×沼野雄司〉
あとがき
序
「音楽」とは一般に、様式史としての歴史的な概念である以上に、歴史的な構造である。
ヨーロッパ近代音楽(本書では、とりあえずバッハ以降の音楽としておく)における表現と形式について、過去から現在へいたる多くの議論から学ぶことは多い。しかしながら本書では「何が音楽として実現されたのか/実現されているのか」ということよりも、「それらを具体化(実現)する働きじたい」について検討してみたい。
本書で扱う「音楽」は、おもに中央ヨーロッパにおける歴史に組みこまれ、文化全体のコンセンサス、あるいはコノテーション(潜在的な含意)にもとづくものである。
とすれば、人間的知の一定の水準を形成する文化的統治の技術が、その本質的部分であろう。言語表現の一貫した秩序=制度と異なり、ジャンル、音楽言語(作曲技法)、演奏様式などからなる音楽表現は、その時々の歴史的現実に即した統治の技術の集成・継承といえよう。
創作や演奏はあくまでも個人的手段において実現されるようにみえるが、その目的である作品の聴取においては、やはり文化的統治がその価値を生みだすのである。また同時代の作品においてのみならず、伝承的な規範にもとづく創作という、スタティックで構造的な歴史的コンテクストを形成するのも、また「音楽」の特徴であろう。
さらには、聴取において成立すると考えられる、「音楽」というテクストに先行しての、創作や演奏の前テクスト的な意味づけも問題になろう。単純に聴取を目的とする直線的な目的論のみが「音楽」の実態でないのはとうぜんである。創作における方法論や、作品演奏の技術・解釈、あるいはそれらが相互にかかわるネットワークの内部にこそ、作品の実質が定位されることを、こんにち、多くの人が認識しているはずである。
本書で扱いたかったテーマは、「音楽」を生み出す文化的なコードと、迷宮ゲームを繰りひろげる作曲家たちのエピソード(逸脱)からみるヒストリー(物語・歴史)である。またヨーロッパと異なり、歴史性なき「音楽」において、さながら脱歴史化をはかろうとする、戦後日本現代音楽創作史である。
さらには、これらのさまざまな人間的知のあり方から想起される、はてしない歴史的記憶の捏造と消去の装置=メモリアとしての「音楽」である。
現代日本作曲界随一の知性として知られ、東京現代音楽アンサンブルCOmeTを率いての旺盛な演奏活動や東京藝術大学准教授として後進の育成にも尽力してきた作曲家・小鍛冶邦隆が、名著『作曲の技法──バッハからヴェーベルンまで』(音楽之友社)に続いて世に問う著書第2弾。
バッハからウェーベルンまでの作曲技法を理論的に分析した前著に続き、本書では「作曲」という行為をとおして作曲家たちが営々と受け継いできた「知の記憶(メモリア)」を明らかにする。
バッハからメシアンまで、クラシックの名曲のなかに秘められた「知の系譜」が露わにされる様子は、まさに圧巻。
最後の3章では、ヨーロッパ音楽を制度として移入した日本において、作曲家たちがなにと苦闘し、作曲の必然性をどこに見出しえたのかが跡づけられる。
巻末には音楽学者・沼野雄司氏との対談が収載され、前衛とアカデミズム、現代日本の作曲界を覆う病理など、さまざまな問題が暴き出される。
2008年4月から12回にわたってアルテスパブリッシングのウェブサイト上で展開された連載「音楽・知のメモリア」を単行本化。
在庫あり
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