小坂 裕子(著)
A5判 312頁 並製
定価 2,750円 (内消費税 250円)
ISBN978-4-903951-31-7 C1073
品切れ・重版未定
奥付の初版発行年月 2010年05月 書店発売日 2010年04月30日 登録日 2010年04月19日
全作品事典×伝記の画期的なショパン・ガイド! ピアノ曲はじめ、室内楽曲、歌曲など全曲を作品番号順に解説。曲ごとのエピソードから自ずとショパンの人生がたちあらわれ、伝記としても楽しめるショパン・ガイドの決定版!
全作品事典×伝記の画期的なショパン・ガイド! ピアノ曲はじめ、室内楽曲、歌曲など全曲を作品番号順に解説。秘められたエピソードの数々も紹介し、曲ごとのエピソードから自ずとショパンの人生がたちあらわれ、伝記としても楽しめるショパン・ガイドの決定版。作品ごとの譜例も多数収載。巻末付録には、略年表・ジャンル別作品一覧・索引など。
はじめに
ショパンゆかりの地
凡例
Episode ① 作品1 にいたる日々──きらめく才能と恵まれた環境
op.1 ロンド
天才少年の素顔
op.2 モーツァルトのオペラ《ドン・ジョヴァンニ》の二重唱〈ラ・チ・ダレム・ラ・マーノ〉による変奏曲
シューマンを驚かせた才能
op.3 チェロとピアノのための序奏と華麗なるポロネーズ
チェロの名手のための作品
op.4 ソナタ 第1番
指導者エルスネルの深い理解と愛情
op.5 マズルカ風ロンド
幼友達アレクサンドラ・ド・モリオル
病弱なショパンと妹エミリアの死
op.6 4つのマズルカ
ウィーンでの孤独な日々とワルシャワ蜂起
op.7 5つのマズルカ
ウィーンへの失望と、愛国心の芽生え
期待の地、パリへ
op.8 ピアノ三重奏曲
ラジヴィウ公に献呈された作品
op.9 3つのノクターン
パリに登場、幸運なスタートを切る
献呈相手のピアニスト、マリ・プレイエル
op.10 12の練習曲
計画的な作曲
超絶技巧で知られるカリスマ・ピアニスト、リスト
リストの嫉妬
op.11 ピアノ協奏曲 第1番
協奏曲の作り手
カルクブレンナーとの出会い
プレイエル・ホールでデビュー
op.12 華麗なる変奏曲
主題となったオペラ
オペラの旋律をテーマにした作品について
op.13 ポーランド民謡による大幻想曲
聴衆を熱狂させる協奏曲
op.14 ロンド・ア・ラ・クラコヴィアク
才能あふれる青年への期待
op.15 3つのノクターン
パリでの親友、ヒラー
op.16 ロンド
ピアノによる音楽物語り
ギャラント様式とルバート
献呈者のカロリーヌ・ハルトマン
op.17 4つのマズルカ
音楽仲間たちとの交流
ロマン派集団
op.18 華麗なる大円舞曲
ロスチャイルド家で幸運をつかむ
ショパンのレッスンと社交界
op.19 ボレロ
献呈者とデルフィナ・ポトツカ伯爵夫人
op.20 スケルツォ 第1番
ショパンのポーランド性─激情とコレンダ
ドイツ人のワイン業者、トーマス・アルブレヒト
Episode ② フィールドが創始し、ショパンが芸術に高めたノクターン
op.21 ピアノ協奏曲第2番
コンスタンツヤ・グワドコフスカに恋して
op.22 アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ
最後のオーケストラ付きピアノ作品
独奏ピアノ曲としての作品22
コンサート・ホールからの訣別
op.23 バラード 第1番
故郷の風
マリア・ヴォジンスカ
シューマンとの出会い
バラードと名付けた理由と献呈者
op.24 4つのマズルカ
献呈者の名が語るショパンの心境
op.25 12の練習曲
練習曲の時代
ショパンの独自性
op.26 2つのポロネーズ
祖国への思いとポロネーズ
歌曲で人気を博した友人、ヨーゼフ・デッサウアーに献呈
op.27 2つのノクターン
実り多き季節、マリアとの婚約
op.28 24の前奏曲
前奏曲の書法
綿密な作品構成
op.29 即興曲 第1番
即興の天才
op.30 4つのマズルカ
マリアとの別れ
気分転換にロンドンへ
op.31 スケルツォ 第2番
ジョルジュ・サンドからの招待
女流作家ジョルジュ・サンド
op.32 2つのノクターン
ショパンに一目惚れ
やわらかく美しい響きを求めて
op.33 4つのマズルカ
ショパンのよき理解者、ヴォイチェフ・グジマワ公
ジョルジュ・サンドとの日々
op.34 3つの華麗なワルツ
聴くワルツ
op.35 ソナタ 第2番
2つの葬送行進曲
頼りがいのあるサンド─マヨルカ島で
プレイエルのピアノで作曲
op.36 即興曲 第2番
マルセイユでの回復と安らぎ
サンドへの感謝の気持ち
ノアンへ
op.37 2つのノクターン
初めてのノアン
グジマワを招待
op.38 バラード 第2番
マヨルカの自然を感じさせる作品
献呈相手はシューマン
op.39 スケルツォ 第3番
弟子のグートマンによる演奏
op.40 2つのポロネーズ
楽譜編集者、ユリアン・フォンタナ
Episode ③ ショパンがもっとも愛したジャンル、マズルカ
op.41 4つのマズルカ
ノアン最初の夏
ポーランドの詩人、ヴィトフィツキ
op.42 ワルツ 第5番
パリ生活再び
op.43 タランテラ
1841 年─2度目の夏をノアンで過ごす前に
プレイエル・ホールでの演奏会
チケットの売り上げと演奏会評
op.44 ポロネーズ
マズルカを聞かせるポロネーズ
op.45 前奏曲 第25番
ドビュッシーの先駆者、ショパン
op.46 演奏会用アレグロ
「演奏会用アレグロ」の意図
ショパン的ウィット
パリ社交界に生きる
弟子のフリーデリーケ・ミュラー
op.47 バラード 第3番
ポーリーヌ・ヴィアルドのノアン滞在
op.48 2つのノクターン
豊穣なノアンの成果
op.49 幻想曲
パラフレーズの手法
op.50 3つのマズルカ
同郷の親友、ヤン・マトゥシンスキの死
op.51 即興曲 第3番
恍惚たる詩の王国の人、ショパン
op.52 バラード 第4番
1842年ノアンの夏──ドラクロワの来訪
サンドの心遣い
献呈者、シャルロット・ド・ロスチャイルド
op.53 英雄ポロネーズ
ショパンの才能を語る同時代の証言
天才少年、カルル・フィルチ
op.54 スケルツォ 第4番
4つのスケルツォに見出せるショパンの創造性
1843年の夏
op.55 2つのノクターン
父の死
姉ルドヴィカと14 年ぶりの再会
思い出に浸るショパン
op.56 3つのマズルカ
姉ルドヴィカに聞かせるマズルカ
op.57 子守歌
奇跡的な作曲技法
op.58 ソナタ 第3番
ショパンの手紙
冬のパリ
op.59 3つのマズルカ
1845年のノアンの夏
変化
パリ生活を好むショパン
op.60 舟歌
サンドの小説『ルクレチア・フロリアニ』
Episode ④ 「バラード」に見出せるポーランドの詩人との関係
op.61 幻想ポロネーズ
晩年の「音楽物語」
op.62 2つのノクターン
別れの要因
ソランジュ
ショパンを味方に
op.63 3つのマズルカ
懐かしき言葉
op.64 3つのワルツ
ソランジュの婚約
優雅な弟子たちに囲まれて
op.65 チェロ・ソナタ
健康の不安
彫刻家クレザンジェ登場
op.posth.66 幻想即興曲
遺作
op.posth.67 4つのマズルカ
ソランジュの結婚
破局へ
ショパン最晩年の作品
op.posth.68 4つのマズルカ
別れの後
晩年のショパン
革命とサンドとの「再会」
死の床のショパン
op.posth.69 2つのワルツ
遺作のワルツ
マリアのその後
op.posth.70 3つのワルツ
ショパンを支えた華やかな女性たち
ジェイン・スターリング
Episode ⑤ イギリス、スコットランドへの旅
op.posth.71 3つのポロネーズ
イギリスからパリへ帰る
ワルシャワ時代の思い出
op.posth.72 ノクターン、葬送行進曲、3つのエコセーズ
ショパンの死
op.posth.73 ロンド
最後の場面
op.posth.74 17のポーランドの歌
ショパンの歌曲
ショパン亡き後のサンド
Episode ⑥ 葬儀
生前に作品番号なしで出版された作品
嘆きの言葉
ソランジュが語る、ショパンの思い出
コビラニスカ番号
ショパンの没後に発見された作品
遺品の整理とジェイン・スターリング
おわりに
主要参考文献
ジャンル別作品一覧
ショパン略年表
索引
作品番号順に語るショパン
ショパンとの最初の出会いは《小犬のワルツ》、《雨だれ》、《革命のエチュード》、《幻想即興曲》、《華麗なる円舞曲》、《別れの曲》、《軍隊ポロネーズ》など、いわゆる標題のついた有名な作品にはじまるのではないだろうか。優雅で澄みきった美しさ、いっぽうでまるで闘うような力強さ。曲想のこのような両極への乖離はけっしてひずみを作ることなく、独自の流麗な響きとなって聴き手の心を捉えて離さない。ショパンの魅力に取り憑かれた人はピアノ独奏曲を次々に耳に、あるいは手にしていきたくなる。
ソナタ3 曲、バラード4 曲、スケルツォ4 曲、エチュード12 曲が2 つ、プレリュード25 曲、ワルツ8 曲、ノクターン18 曲、マズルカ41 曲、ポロネーズ7 曲、ロンド3 曲、即興曲3 曲、変奏曲など7 曲、この数字はすべてピアノ独奏曲で、ほかにピアノとオーケストラのための作品6 曲、さらに室内楽曲3 曲。これらは、ショパンが生前、自らの意志で作品番号を付けて出版した数だ。1 曲のものもあれば、一番多いものでは24 曲をまとめてひとつの作品番号を付けたものもあり、全部で作品65 まである。作品1 はロンドで15 歳の作、最後の作品番号65 はチェロ・ソナタであり、それは死の3 年前となる。
これらの作品の背景とは、どのようなものだったのだろう。たとえばモーツァルトなどは、誰かから依頼を受けて作曲することが多く、その人生はもちろん作品に色濃くあらわれるとはいえ、曲の依頼主のリクエストに沿うよ
う作る必要があった。しかしショパンは、依頼を受けて作曲することはほとんどなく、作品を自らの意志で紡ぎ出しては、ほぼ年代順に作品番号を付けている。作品ごとに作曲にまつわるエピソードなど、その時代のショパンに
注目すると、自ずとショパンの人生がたちあらわれてくるのではないか。そして作品そのものがより深く理解できるのではないだろうか。そのような意図をもつ「ショパン論」が可能ではないかと考えたのが、本書を執筆した最大の理由である。
本書ではショパン自身の手によって作品番号が付けられた作品65 までのほか、ショパンの死後、友人であり楽譜編集者でもあったフォンタナによって編集された遺作についても、その楽曲構造や編集方法、そして創造の背景を明らかにしている。さらに作品番号が付けられていないもので、20 世紀になってポーランドの研究者コビラニスカが整理しKK 番号を付けたものも、できるだけ言及するようにした。
これまで、私自身もショパン伝を書いてきたし、他にも本当に数多くのショパン評伝があるが、多くは生涯篇と作品篇に分かれていて、生涯篇の充実は図られてはいるものの、巻末に置かれている作品解説は楽曲の理解には不十分で物足りない、曲をより詳しく知るには、作品解説のための専門書を別に手に取らなければということになる。
本書は、ショパンを聴くときや、どの曲を演奏しようかと考えるときに、この1 冊で、主題など作品の構成要素と全体構造を知るとともに、ほぼ同じページの中で、創造の日々の出来事を知ることができ、まさに「ショパン通になりたい人のための手引書」を目指している。
彼の作品のように完璧なほどの音響美学は、創造と生涯の整合性の中で語られてこそ、はじめて理解できるのではないだろうか。
時代、環境、交友、パリという街が培い見守り続けた創造の成果、それを明らかにしていく本書『フレデリック・ショパン全仕事』は、生誕200 年を記念するにふさわしいショパン論になったと自負している。
小坂 裕子
伝記としても読める、全作品事典が登場! 曲ごとのエピソードから、自ずとショパンの人生がたちあらわれてくる画期的なショパン・ガイドです。譜例も多数収載。
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