山本 訓久(著)
A5判 256頁 ビニールカバー装
価格 2,420円 (内消費税 220円)
ISBN978-4-86559-194-1 C1073
在庫あり
書店発売日 2018年12月14日 登録日 2018年12月30日
ピアノ教本の超定番、ブルクミュラー《25の練習曲》を使ったユニークな指揮法教本が誕生。ピアニストがいれば指揮の練習がすぐにでき、楽曲の構造がわかりやすいので音楽をイメージしやすく、アナリーゼの勉強にもなる。
ピアノ初心者向けのピアノ教本の超定番、ブルクミュラー《25の練習曲》。
誰もが知っているこのピアノ教本を使った、まったく新しい指揮法教本が生まれました。
指揮法の学習において、もっとも苦労するのは、オーケストラや合唱団など、
自分の指揮に合わせて演奏してくれる人たちを確保するのがむずかしいこと。
そして、指揮の練習にいたる前の譜読みや楽曲分析に時間がかかることです。
しかし、ピアノを勉強した人なら一度は練習したことのあるブルクミュラー《25の練習曲》なら、
ピアニストがひとりいれば、指揮の練習が成り立ちます。
楽曲の構造がシンプルで、わかりやすいタイトルも付いているので、音楽をイメージしやすく、
指揮者の基礎訓練として必要なアナリーゼの勉強にもなります。
そして、この《25の練習曲》を子ども向けのピアノ教本とあなどってはいけません!
ベートーヴェンやシューマン、ショパンなどから受け継いだ西洋のピアノ音楽の精髄を、
これから音楽を学ぶ子どもたちに伝えようと、ブルクミュラーが苦心して編み上げた一級の芸術作品なのです。
この25曲をていねいにひもとくことで、音楽史や音楽理論などの教養も、いつのまにか身についているにちがいありません。
序文は『バイエルの謎』(新潮文庫)、『唱歌と十字架』(音楽之友社)の著者として知られる音楽学者・安田寛さん。
指揮を教える先生や学ぶ人たちだけでなく、ピアノの先生や学習者にもおすすめのユニークな指揮法教本の誕生です。
はじめに
序(安田寛)
はじめに
本編に入るまえに
ブルクミュラー《25の練習曲》op.100
楽曲分析と指揮の実践
1.純真さ(素直な心) La candeur
2.アラベスク L’arabesque
3.パストラーレ La pastorale
4.小さな集い(子どもの集会) La petite réunion
5.無邪気 Innocence
6.進歩 Progrès
7.澄みきった流れ(清い流れ) Le courant limpide
8.優雅な人(優美) La gracieuse
9.狩り La chasse
10.やさしい花 Tendre fleur
11.せきれい La bergeronette
12.告別(別れ) L’adieu
13.なぐさめ(コンソレーション) Consolation
14.シュタイアーの舞曲(シュタイアーの踊り) La Styrienne
15.バラード Ballade
16.ひそかな嘆き(小さな嘆き) Douce plainte
17.おしゃべりな人(おしゃべり) La babillarde
18.気がかり(心配) Inquiétude
19.アヴェ・マリア Ave Maria
20.タランテラ La tarentelle
21.天使の音楽 L’harmonie des anges
22.バルカローレ Barcarolle
23.帰還(再会) Le retour
24.つばめ L’hirondelle
25.乗馬 La chevaleresque
全25曲のまとめ
おわりに
参考文献表
はじめに
本書はフリードリヒ・ブルクミュラー(Friedrich Burgmüller, 1806–1874)の《25の練習曲(25 Etudes faciles et progressives, conposées et doigtées expressément pour l'étendue des petites mains)》op.100(1851)を指揮法のテキストとしてもちい、楽曲分析、楽曲の背景および指揮法のテクニックとポイントについて解説したものである。
「ブルクミュラー」。日本でピアノを学んだことのある人ならば、その名前をおそらく一度は聞いたことがあるだろう。その知名度とピアノ教育のなかでの楽曲の浸透度はきわめて高い。初版の刊行いらい160年余をへてなお、彼の《25の練習曲》がもちいられる理由は多々あるが、まずはその標題音楽的なタイトルとそれにフィットした音楽の内容が大きいだろう。そしてなによりも美しい旋律線と沸き立つリズム、平易で簡潔な和声や形式など、とにかく音楽の内容がわかりやすく親しみやすい。
「なぜブルクミュラーで指揮法か?」と不思議に思われる方も多いだろう。じつはブルクミュラーは、以前から指揮法の教材としてしばしばもちいられてきた。そういう私自身も指揮を学びはじめた最初のころ、ブルクミュラーの楽曲でレッスンを受けた記憶がある。
自分が教える立場になった現在、このブルクミュラーの曲集を、私は機会あるごとに取り上げている。現職の先生方のための講習や大学での授業、レッスン、指揮法ゼミなど、その回数は年を追うごとに増えている。実際にテキストとして使ってみた感想をいえば、25曲を通して何度繰り返してレッスンしても、音楽の内容がヴァラエティに富んでいてとにかく飽きるということがない。受講者からも「イメージをつかみやすい」「音楽がわかりやすい」と好評だ。それをなんらかのかたちでまとめておこうとメモを取りはじめたのが、本書執筆のきっかけである。
指揮の学習においてとくに重要なのは、まず楽曲の様式やフレーズの構造などの基本を学ぶことであるが、ブルクミュラーの楽曲はそれらが平易かつ簡潔、しかも明快であり、楽曲分析の入門用テキストとしてもひじょうにすぐれている。とくに、指揮の初学者にとっては和音の連結や借用和音について理解することがなかなかむずかしいのだが、この曲集では、ピアノを学ぶ子どもたちを意識して書かれているためか、ハ長調やト長調、ヘ長調など、おもにシャープやフラットの少ない調が選択されているので、和声の理解へのサポートがたやすく、独習にも適している。
さらに、ある曲を指揮で実際に表現するさいには、楽曲にたいして自分なりのイメージをもち、それをもとにアンサンブルを整え、指揮のかたちに具現していかねばならない。そこでのイメージの裏付けとなるのが分析力である。イメージの裏付けが明確だと、演奏家にたいする説明にも説得力が出る。そのためのお手伝いをするのが本書である。人前でなにやら図形を描くことだけが指揮ではないのである。
さて、前置きはこれくらいにしておこう。そろそろみなさんと一緒に、いつものレッスンとはひと味違った「ブルクミュラーの小ミクロコスモス宇宙」をひもといていこうではないか。
在庫あり
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