A5判 180頁 並製
価格 1,980円 (内消費税 180円)
ISBN978-4-86559-183-5 C1073
在庫あり
奥付の初版発行年月 2018年03月 書店発売日 2018年04月10日 登録日 2018年03月02日
楽器は使用禁止!
「移動ド唱法」で
ほんとうの音感を身につけよう!
楽器という道具に頼らないからこそ、
もっとも大事な感性が自分のものになる。
「移動ド唱法」を徹底的に学習して、
自分の耳と感覚を
思いのまま使えるようになろう!
最初は楽譜を使わずに音感を育て、
少しずつ五線譜の読み方に慣れていけるように構成。
楽典、ソルフェージュ、音楽史などの科目の垣根を超え、
全科目につうじる根本的な音楽的能力を身につける!
序文:本書の使用上の注意──かならずお読みください!
誤解されている「ドレミ」
楽器を使わない理由
本書は、いわゆる「移動ド唱法」の教材です
「移動ド唱法」に対する反論
音楽実践では、もちろん、「固定ド」的な感覚も必要です
第1部 正しい「ドレミ感覚」を身につける
1.「ドレミファソラシド」のメロディを歌おう
2.音程
3.広い2度(長2度)と狭い2度(短2度)
4.音階の復習
5.3度の音程
6.広い3度(長3度)と狭い3度(短3度)
7.4度の音程
8.完全な4度(完全4度)と広い4度(増4度)
9.5度の音程
10.完全な5度(完全5度)と狭い5度(減5度)
11.6度の音程
12.広い6度(長6度)と狭い6度(短6度)
13.7度の音程
14.広い7度(長7度)と狭い7度(短7度)
15.8度の音程
16.音の性格
17.長調と短調
18.短調の音階
19.短調によるさまざまな音程練習
20.和声的短音階と旋律的短音階
21.臨時変化音について
第2部 楽典
「楽譜」の一種としての五線譜
五線譜のしくみ
音名と音部記号
オクターヴの位置に対応した音名
音部記号の位置は変わりうる
階名の必要性
臨時記号♭♯
多彩な旋法から「長音階」「短音階」へ
調号
調の拡張
五度圏
調号を覚えるための「魔法の呪文」集
ラ旋法のヴァリエーション 1)和声的短音階
ラ旋法のヴァリエーション 2)旋律的短音階
音程のしくみ 1)全音階固有音どうし(階名を付けられる2音)の音程
音程のしくみ 2)全音階固有音どうしでない(階名を付けられない2音)の音程
音符
基本的な音符の名称
付点音符
連桁
連符
休符
拍子とリズム
練習1の答え
練習6の答え
付録:すべての長音階、自然的短音階、和声的短音階、旋律的短音階
第3部 歌唱課題集
1.-1 同度〜3度の音程を用いた課題(長調=ド旋法)
1.-2 同度〜3度の音程を用いた課題(短調=ラ旋法)
2.-1 同度〜5度の音程を用いた課題(長調=ド旋法)
2.-2 同度〜5度の音程を用いた課題(短調=ラ旋法)
3.-1 同度〜8度(オクターヴ)の音程を用いた課題(長調=ド旋法)
3.-2 同度〜8度(オクターヴ)の音程を用いた課題(短調=ラ旋法)
4.-1 臨時変化音を用いた課題(長調=ド旋法)
4.-2 臨時変化音を用いた課題(短調=ラ旋法)
あとがき
あとがき
著者二人はどちらも音楽学を専門としており、その視点から従来の音楽教育のあり方に疑問を持っていました。
そのひとつは、ソルフェージュ、楽典、音楽史などの科目が分けられすぎていると感じていたことです。もうひとつは、十二平均律、音名唱法(具体的には「固定ド」唱法)などの無批判な使用、また、一部にみられる絶対音感信奉に対してです。他方で、階名(いわゆる「移動ド」)の存在すら知らない学習者が増えていることに危機感を覚えていました。これらの現状を克服し、初学者が音楽学習の導入としてほんとうに大事な部分を勉強できる教本を作りたいと意気投合し、本書が書かれることとなりました。
結果として、本書には従来の音楽教本にはない特色が多く生まれました。ひとつは楽器の使用禁止です。吹奏楽部などに所属している(いた)人の中には、練習中にチューナーやメトロノームに頼って注意された経験がある人もいるかもしれません。その大きな理由は、道具に頼ると自分の耳と感覚で音楽をする力が育たないということです(もちろん、そもそも音楽はチューナーやメトロノームなどの絶対的な尺度では測れない部分が多いことも理由です)。そして、楽器も歌唱の音取りを目的とするのであれば、チューナーなどと同じく道具の一種にすぎなくなります。これらのことを踏まえ、本書は、学習者が楽器という道具に頼らずに、自分の耳と感覚を自立して使えるようになるための第一歩となっています。
また、学習者が五線譜に最初からふれるのではなく、じょじょに慣れることができる構成になっている点も特色です。よく指摘されるように、五線譜という媒体は初学者にとっては複雑すぎ、特に相対的音高関係の表記には本来適していません。したがって、最初から五線譜で勉強するよりも先に、ドレミを直接書いたような簡単な楽譜を使ってもよいので、まずは音程感覚そのものを鍛えてこそ、五線譜の勉強にも無理なく入れるといえます。これは、語学の学習において漢字よりも先に平仮名を勉強するほうが合理的であることに例えられるかもしれません。
また、著者二人が基礎として大変重要だと考えている階名唱法(いわゆる「移動ド」唱法)を土台としている点です。いうまでもなく、音楽の本質は絶対音高ではなく相対的音高関係にあります。本書は、そのような音楽のもっとも大事な部分である相対的音高関係を、階名唱法をつうじて重点的に訓練できる教材となっています。日本で(不思議なことに)階名唱法に特化したソルフェージュ教材が皆無に近いなか、本書は多くの学習者にとって待望の教材であるといえるでしょう。
そしてなによりも、従来の楽典、ソルフェージュ、音楽史などの科目の垣根を超え、全科目につうじる根本的な音楽的能力を身につけられる点です。これらの科目は本来、楽譜が読めるようになるという共通の目標がある点で互いに切り離せません。記譜法について深く理解するところまで含めるのであれば、音楽史もまた例外ではないといえます。しかしながら、現在の日本では音大入試の科目分けの影響から、これらを別科目として学ぶ傾向が強くなっています。特に楽典は、現在に至るにつれて「音大入試で点を取るための科目」の性格が強くなってしまっていて、極端な場合、ひとまず視覚上の情報からだけでも解けるような「解法」が解説されていることすらあります。しかし、そもそも楽譜は音楽を記号化したものなので、その表している音楽を読み取れないまま記号だけを切り離して学習しても意味がありません。音と記号がどちらも必要であるという楽典の本来の姿を、本書で取り戻せたのではないかと思います。
内容に関しては、著者が二人とも音楽学を専門にしているということもあり、平易な語り口を心がけつつも最低限の専門性を保つように心がけました。
なお、本書をきっかけに階名唱法のさらなる訓練をしてみたいという読者のために、大島が書いた以下の教本をお薦めします。
大島俊樹『階名唱(いわゆる「移動ド唱」)77のウォームアップ集──毎回のレッスンのはじめに』(自費出版)、2017年
これは、毎回の音楽学習の最初に、ウォームアップ用に数曲抜き出して歌えるドリル(歌唱課題)を集めた曲集です。本書が音程の訓練を中心にしている一方で、こちらの教本は本書第1部16節にて解説されている「音の性格」の理論を踏まえて作成されています。また、本書が音楽学習上の項目ひとつひとつをていねいに学習するスタイルを取っている一方で、こちらの教本は、学習者がまずは階名唱そのものに慣れ、なおかつ、なるべく最短距離での階名唱の上達が見込まれるように配慮した、ある意味「効率主義」的な性格も持っています。ただし、課題の1曲1曲は音楽的に自然で、いつでも口ずさみやすい旋律となっています。両教本を併用することにより、さらに階名感覚に磨きをかけることができるでしょう。購入を希望される読者は、下記のメールアドレスよりお申込みください。
fixeda.moveddo.to@gmail.com(大島)
本書の作成にあたり、多くの方にお世話になりました。特に、イラストの下書きを描いてくださった東京藝術大学楽理科修了生の松本彩友美さん、その下書きをイラストにおこし、全体のブックデザインを担当してくださった河合千明さん、そしてアルテスパブリッシングの木村元さんと、鳥谷健一さんに心より感謝申し上げます。
2018年3月
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