劉 麟玉(編著) / 福岡 正太(編著) / 細川 周平(著) / ⿈ 裕元(著) / 王 櫻芬(著) / 山内 文登(著) / 長嶺 亮子(著) / 尾高 暁子(著) / 垣内 幸夫(著) / 岡野 〔葉〕 翔太(訳)
A5判 272頁 並製
定価 3,300円 (内消費税 300円)
ISBN978-4-7998-0208-3 C1073
在庫あり
書店発売日 2024年03月28日 登録日 2024年02月28日
レコード・コレクターズ
評者:青木深 |
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ミュージック・レヴュー・サイト「Mikiki」
評者:東琢磨 |
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月刊みんぱく | |
読売新聞
夕刊 大阪版 評者:藤本幸大 |
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intoxicate |
東アジア各地域におけるレコード史が、日本と関わりを持ちながら展開してきた点に言及し、レコードが東アジアに普及した背景や、日本が音楽の伝承に与えた影響などを、音盤(SPレコード)を軸に様々な角度から探求した。
19世紀に誕生した蓄音機は、20世紀に入りアジアでも急速に普及した。西洋のクラシック音楽の輸入盤ばかりでなく、日本、中国、台湾、朝鮮でもさまざまな録音が行われ、多くの音盤(SPレコード)が発売された。本書では、東アジア各地域におけるレコード史が、日本と関わりを持ちながら展開してきた点に言及し、レコードが東アジアに普及した背景や、複雑な構造の中で日本が音楽の伝承に与えた影響などが論じられている。当時、欧米の外資系を含む日本のレコード会社は、東アジア各地に積極的に進出し、録音、販売を行った。こうした東アジアのレコード産業の歴史は、グローバリゼーションのひとつの例と見ることができる。さらに、台湾と朝鮮半島のレコード産業の発展は中国とは異なり、日本の植民地支配の影響も大きかった。日本のレコード産業と植民地の歴史には、グローバリゼーションや資本主義、植民地主義が複雑に交錯している。また本書が音盤(レコード)を扱いながらも、書名に「音楽」ではなく「声」を用いているのは、当時のこれらのレコードの内容が音楽にとどまらず、歌はもちろんのこと、演説や映画説明、戯劇など、多様な声の表現にわたっていたものだからだ。東アジアの歴史を、音盤を通して様々な角度から探求した一冊。
総説 蓄えられた声を百年後に聴く──私たちはなぜこの百年のレコード史を追っているのか(劉 麟玉)
第1部 東アジアのレコード産業――声の近代
第1章 日本の円筒録音時代――声の再生、模倣、保存(細川 周平)
第2章 日本統治時代における台湾レコード産業と「台湾盤」の市場メカニズム(黃 裕元/訳:岡野〔葉〕翔太)
第3章 台湾テイストを作り出す――日本蓄音器商会の台湾レコード制作の戦略を探る(王 櫻芬/訳:長嶺 亮子)
第4章 「新譜発売決定通知書」を通してみる台湾コロムビアレコード会社と日本蓄音器商会の間の「対話」──戦争期のレコード発売状況の調査を兼ねて(一九三〇〜一九四〇年代)(劉 麟玉)
第5章 写音的近代と植民地朝鮮、一八九六~一九四五(山内 文登)
第2部 東アジアのレコード音楽の諸相――声の平行と交錯
第6章 草津節――お座敷からレコードへ、そして外地へ(福岡 正太)
第7章 戦前・戦中台湾のコロムビアレコードの音から――歌仔戯(ゴアヒ)と新興劇の音楽の繋がりをさぐる(長嶺 亮子)
第8章 清朝末期から中華民国期の崑曲SPレコード──吹込者と録音内容にたどる近代伝統劇界の変遷(尾高 暁子)
第9章 義太夫節・パンソリ・蘇州弾詞の歴史的音源に聴く演奏様式の変容(垣内 幸夫)
一八九七年の東京日日新聞に「人の語言を蓄へて、千万里の外、又は十百年の後にても発することを得る機械」というフォノグラフについての記事がある。また、一九〇〇年七月一九日の『台湾日日新報』には「音声を万世に伝ふ」という記事もある。さらには、当時のオーストリア=ハンガリー帝国において、ウィーン政府は「蓄音機の至便至快なるは云ふまでもなきことなるが今や之を利用し十九世紀の音声を悉く網羅し以て後世子孫への一大遺物となさん」という膨大な計画を立ち上げた。その理由は「一九世紀の音声をありの侭に後世子孫に伝へ彼等をして其祖先の音響を聞かしめ宛然祖先に接するが如き」ということであった。当時の有名な人物の声を記録することもその計画に含まれていた。私たちは今、まさにその「万世」の二百年目に入った時点に立ち、蓄音機の歴史を振り返りながら、当時のレコードの音声や音楽が何を語っているのか聞こうとしている。(後略)
蓄音機とその音盤(SPレコード)は20世紀に入る頃から欧米のみならずアジアでも急速に普及しました。当初は輸入された西洋のクラシック音楽が中心だったようですが、ほどなく、日本、中国、台湾、朝鮮でもさまざまな録音が行われ、音盤が発売されました。当時、日本の殖民地となっていくこれらの地域では、日本のレコード会社の進出も盛んで、各地で録音、販売が行われていたそうです。こうした東アジアのレコード産業の歴史は、グローバリゼーションのひとつの例と見ることができるでしょう。一方で、台湾と朝鮮半島のレコード産業の発展は中国とは異なり、日本の植民地支配の影響も大きかったといわれています。政治環境の変化が商品の販売に影響を与えるなど、複雑な状況を生み出したのです。日本のレコード産業と植民地の歴史は、グローバリゼーションや資本主義、植民地主義が交錯する複雑なものです。本書では、東アジアの各地域のレコード史が互いに無関係ではなく、日本と関わりを持ちながら展開してきた点に言及し、論じられています。レコードが東アジアに普及した背景や、複雑な構造の中で日本が音楽の伝承に与えた影響などについても本書では言及されています。また音盤(レコード)を扱いながらも、書名に「音楽」ではなく「声」を用いているのは、当時のこれらのレコードの内容が音楽だけというわけではなく、歌はもちろんのこと、演説や映画説明、戯劇など、声に関する多岐にわたったものだからです。東アジアの歴史を、音盤を通して様々な角度から探求した一冊です。
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