相原 耕治(著)
A5判 352頁 並製
定価 2,750円 (内消費税 250円)
ISBN978-4-7998-0100-0 C3055
在庫あり
奥付の初版発行年月 2011年10月 書店発売日 2011年10月07日 登録日 2011年09月10日
シンセサイザーの歴史、音を作る仕組み、使い方、さらに独自の音を作る方法も解説する総合的なシンセサイザー解説書。初心者にもわかりやすいように、専門用語や固有名詞には解説を付した。貴重な写真等も収載。
電気的に音を作り出すシンセサイザー(シンセ)。その歴史から、音を作る仕組み、使い方、そして、独自の音を作る方法も解説する。シンセサイザーというと、減算方式、倍音加算方式、FM方式、PCM方式など様々な種類があり、難しい用語も数々出てくるが、本書はできるだけわかりやすく、またそれらの基礎知識が無い人でも読めるように用語解説を数多く含めて書かれている。シンセサイザーの基礎知識がこの1冊ですべてわかると同時に、サンプル音から音を選んでいるだけの使い方から、自らオリジナルの音を作り出す方法までもが書かれている。シンセサイザーの総合解説書といえる1冊。
著者による本書オフィシャルサイトはこちら(http://synthebook.syn-phonic5.com/)
はじめに
序章 シンセサイザーの前に
−予備知識と周辺機器
1 楽器の種類−生と電気と電子
2 アナログとデジタル−アナログとデジタルは何が違う?
3 MIDI−MIDI規格とは?
4 CV/GATE−MIDI以前の方式
5 シーケンサー−自動演奏装置
6 MIDIファイル−SMFとは
7 GM音源−みんな同じ音!
8 RP−MIDIの追加規定とは?
9 DTM−コンピュータ・ミュージック
10 オーディオ信号−音の信号
11 オーディオファイル−録音された音声データ
12 DAW−DAWって何?
13 MTR−1台のシンセサイザーでも大編成に!
14 同期−機材をシンクロ!
15 ミキサー−スピーカーはパート数分必要か?
16 エフェクター−効果をつけてさらに音作り
17 プラグイン形式−ソフト音源が使えない?
18 ソフト音源−ハードとソフト
19 インターフェース−インターフェースは通訳さん
20 ドライバ−コンピュータで楽器を制御
21 ノート・ナンバー−音名を示す
第1章 音について
−音を知ろう!
1 音とは?−見えない音
2 音を電気信号へ−マイクロフォンの仕組み
3 マイクの信号とは?−音を波形で見る
4 波形と音色−波形で音色は変わる?
5 音の3要素−音を分けて考えよう
6 同じ音圧レベルの音なのに?−等ラウドネス曲線
7 波形を分解−サイン波とは?
8 倍音を合成してみよう
【実験1】倍音の仕組みをMIDIで実験しよう
9 音程という言葉−紛らわしい音程
第2章 シンセサイザーまでの歴史
−過去〜現在まで
1 テルハーモニウム−水力発電で電話配信−!?
2 テルミン−手を触れない不思議な楽器
3 オンド・マルトノ−フランス近現代の作曲家が求めた音
4 トラウトニウム−ドイツの電子楽器
5 ハモンド・オルガン−倍音加算で音色作り
6 RCAミュージックシンセサイザー−部屋ごと楽器?
7 メロトロン−アナログ時代のサンプラー
8 モーグ・シンセサイザーの誕生−自由の国が生んだ自由な楽器
9 ハラルト・ボーデ−シンセサイザーの構想を考えた人
10 シンセサイザーの進化−アナログからソフトウェアまで
第3章 音源の分類と共通機能
−音源方式とコントローラについて
1 シンセサイザーの分類−アナログとデジタルだけじゃないの?
2 共通コントローラ−電子音にも演奏表現を!
第4章 減算方式
−アナログ・シンセサイザーでおなじみ!
1 不安定な電圧−アナログ=減算の理由
2 減算方式とは?−減算方式の考え方
3 減算方式の構成−それぞれのモジュールの役割
4 オシレータ(VCO)−発振器が音の源です
5 ノイズ・ジェネレータ−あの砂嵐が!−
6 外部入力−マイクやオーディオがオシレータ?
7 フィルタ(VCF)−音色加工所
8 ノイズでフィルタチェック!
【実験2】スペクトラム・アナライザで見る
9 キー・フォロー−音域で変わるもの
10 アンプとEG−音量をあげる増幅器
11 EG(1)−アンプに音量変化を!
12 EG(2)−【実験3】ADSRをアンプで実感しよう!
13 アンプのパラメータ−EGのおかげで地味なパラメータ
14 EG(3)−オシレータ/フィルタ編
15 キーボード・スケーリング−音域でパラメータを変化させる
16 ベロシティー−強弱でパラメータを変化?
17 LFO−音を揺らす
18 LFOのパラメータ−揺らすための要素は?
19 サンプル&ホールド−効果音の必需品
20 リング・モジュレータ−複雑な倍音作り
21 アンプリチュード・モジュレーション−RMと何が違う?
22 フリーケンシー・シフター−RMの片方だけ欲しいときに
23 クロス・モジュレーション−VC0をVCOで変調する?
24 アナログ・シーケンサー−ツマミの位置で自動演奏?
25 鍵盤からの信号−アナログとMIDIの制御は?
第5章 倍音加算方式
−サイン波で音作り?
1 倍音加算とは−フーリエ解析? サイン波合成?
2 倍音加算楽器の基本(1)−パイプオルガンの仕組みを知ろう
3 倍音加算楽器の基本(2)−ハモンド・オルガンのドローバーを知ろう!
4 倍音の分析−3DによるFFT
5 倍音加算の音作り−音作りの方法
6 2つの倍音加算−純正と応用
7 純正!倍音加算の実用化−K5のパラメータに学ぶ
8 倍音加算のまとめ−倍音加算のパラメータ
9 現在の倍音加算音源−ソフト音源では……
10 倍音加算の落とし穴−非整数倍音がでない?
第6章 FM方式
−音を揺らして音色作り
1 FMとは?−考え方の基本はLFO
2 FM音源の誕生−アナログからデジタルへ
3 FM音源の一般化−世界中がDXブームに
4 FMの音作り−サイン波2つで音作り
5 FMを簡単に−FMを例えると
6 周波数の比率−予測しにくい理由
7 エンベロープの効果−音色変化はEGによって作られる
8 FMの実用化−DX7のパラメータに学ぶ
9 ノイズ・ジェネレータ−FMにはノイズがない?
10 FMの応用−SYシリーズからソフトまで
11 サイン波テーブル−サイン波読み出しの方法
第7章 そのほかの変調方式
−PD音源とウェーブシェーピング
1 PD音源−波形を歪めて音作り
1 カシオ計算機−デジタル技術の達人がシンセサイザー業界へ
2 PD音源−波形を歪ませる
3 パラメータの構成−シンプルなデジタル!
4 カシオの功績−国産初の16−ビットサンプラー
5 PD音源のその後−iPD音源へ
2 ウェーブシェーピング−簡単な操作で複雑な音?
1 ウェーブシェーピング−誕生からの流れ
2 ウェーブシェーピングを例えると−W・Sのイメージは?
3 W・Sの仕組み−シェーパーに映すとどうなる?
4 強弱演奏−シェーパーの利用例
5 最近のウェーブシェーピング−ソフトに多いW・S機能
第8章 サンプラーとグラニュラーシンセシス
−マイクで録ればすべて楽器?
1 サンプリングの発想−古典派から現代音楽まで
2 サンプラーのルーツ−光学録音とメロトロンの功績
3 フェアライトCMI−夢のサンプラー
4 一般化されたサンプラー−サンプラーが自分のものに!
5 サンプラーの使い方−さまざまなアイデア
6 サンプラーの仕組み−波形をデジタル化する
7 1つのサンプル音−ワンショットとループ
8 フォルマントとは?−サンプリングらしい声
9 生楽器のように−リアルさを求めて
10 フレーズサンプラー−楽器音からフレーズへ
11 サンプル音の編集−音ネタの編集
12 バリフレーズ−驚異のサンプラー
13 さらに進化したサンプラー−グラニュラー・シンセシス
14 音ネタを自分で録る−本来のサンプラーの楽しさを!
第9章 PCM方式
−この際、生音もらいます!
1 PCMのはじまり−PCMが一般化されるまで
2 PCMシンセサイザーの登場−大胆なD−50の発想
3 PCMとは?−CDからサンプリングまで
4 サンプラーとPCMシンセサイザー−似てるけどココが違う
5 PCM独自のシンセサイズ−減算以外のPCMシンセサイザー
第10章 モデリング・シンセサイザー
−物理からアナログまで
1 モデリング・シンセサイザーとは−楽器を作って音作り
2 物理モデリング音源−音を解明した産物
3 ウェーブガイドとは?−楽器の振動現象を再現
4 生楽器について−生楽器の仕組みを知ろう
5 ヤマハVL1−いきなり現れた音源方式
6 物理モデリング音源の構成−VLのパラメータに習う
7 Prophecyの登場−予言者の再来?
8 物理モデリング音源の現在−ハードからソフトまで
9 バーチャル・アナログ−突然現れた赤いシンセサイザー
10 ソフト音源−名器も再現
11 エミュレーション、シミュレーション、バーチャル
−ものまね? 実験? 仮想?
第11章 ボコーダーと合成音声
−機械のような声? 人のような声?
1 リアルタイムに声を再現する方法
1 ボコーダーの歴史−開発から一般化まで
2 声の仕組み−人間の声のメカニズム
3 ボコーダーの仕組み−信号の流れは?
4 ボコーダーの音作り−ボコーダーのパラメータ
5 ボコーダーの行方−その後のボコーダー
6 トーキング・モジュレータとは?
−ローテクでも味のあるサウンド
2 プログラムにより声を合成する方法
1 名前を整理−音声合成と合成音声?
2 機械の声−合成音声を振り返る
3 フォルマントとは?−フォルマントって1つじゃないの?
4 フォルマント・フィルタ−シンセサイザーで合成音声
5 FM+フォルマント−FMの可能性を最大限に活かす
6 ボーカロイドとは?−打ち込みによるバーチャル・シンガー
7 ボーカロイドの流れ−さまざまなボーカロイド
8 隠れたボーカルシンセサイザー−カンター2
第12章 ドラムマシンとシンセサイザー・ドラム
−打楽器専用シンセサイザー
1 リズムマシンの歴史−リズミコンからドラムマシンまで
2 打楽器の電子楽器
−シンセサイザー・ドラム、シモンズドラム、電子ドラム
第13章 そのほかのシンセサイザー
−ギターシンセやウインドシンセなど
1 ギター・シンセサイザー−ギターでシンセサイザーを鳴らす
2 ウインド・シンセサイザー
−息づかいでシンセサイザーを鳴らす
3 ベース・シンセサイザー−ベース専用シンセサイザー
第14章 これからの電子楽器
−未来へ向けた電子楽器とトイ・シンセ
V-Synth GT−これにしか出せない音がある!
Miburi(ミブリ)−体を使ってコントロール
TENORI-ON(テノリオン)−音と光を演奏する
KARMA(カーマ)−MIDIデータ生成技術
KAOSSILATOR(カオシレーター)−小さなパフォーマー
nano KONTROL−コンパクトなコントローラ!
コルグDS-10−ゲーム機がシンセサイザーに?
UPIC(ユーピック)−初の絵と音のインターフェース
CIRCLE−円が魅せるパラメータ
Meta Synth(メタシンセ)−アナライザで絵?
Drawdio(ドローディオ)−鉛筆で描いて音?
Thingamagoop(シンガマグープ)−お茶目なトイ・シンセ
携帯電話−着メロ音源で演奏を?
iPhone/iPod touch/iPad
−電話? パソコン? 楽器?
Audio Cubes(オーディオキューブ)−光と音のオブジェ
スタイロフォン−手のひらにのる電子楽器のルーツ
ケロミン−可愛いらしい電子楽器
おたまトーン−おたまじゃくしはカエルの子
IBVA(イーバ)−脳波でMIDIコントロール
Eigenharp(アイゲンハープ)−新たなコントローラ
アナログ復活モデル−現代に甦る名器たち
ハンドメイド・シンセサイザー−自分だけのオリジナルシンセ
付録
シンセサイザー奏者として知っていたほうがいいこと
あとがき
索引
「選ぶ!」から「創る!」へ
「シンセサイザー(synthesizer)」の語源「synthesize」は「合成する」、「統合する」という意味で、音楽用であることから当初は「ミュージック・シンセサイザー(music synthesizer)」と呼ばれていた。つまりシンセサイザーは「音声を合成する装置」であり、音を作る楽器なのだ。
しかし、最近はボタン1つでイメージに近い音が見つかるので、音作りの時間を節約して作曲に時間を使えるようになった。このため、シンセサイザーをプリセット・キーボードとして使う人も多くなった。でも「この音のココをもう少し変えられたら……」と思ったことはないだろうか? そんな願いはシンセサイザーなら簡単に叶えてくれるのだが、問題は「どうすれば変えることができるのか」ということなのだ。
ギター奏者もエフェクターを使って音を作っているし、ヴァイオリン奏者も作曲家や作品に応じて音を作って演奏している。音を作るシンセサイザーが、音を作らないなんてもったいない!
そこでこの本では、音を作るための基礎知識をほとんどの音源方式のシンセサイザーに応用できるように、また初心者にもわかりやすく順序だてて説明するよう心がけてみた。
私も中学一年生のとき、説明書が紛失したというシンセサイザー(YAMAHA CS30)を借りて、適当に動かしてはその仕組みを感じ取るのに悪戦苦闘した。夜中に音が止まらなくなって怖くなり電源コードを抜いた、なんてこともあった。そんな当時にもし、この本があったら……という気持ちで書いてみた。
これからシンセサイザーをはじめる人や、いつもプリセットを使っている人も、この本が「自分の音」を作るきっかけになればうれしい次第だ。そんな願いを込めて、音を「作る」ではなく「創る」という気もちで読んでいただけたらと思う。
著者は、専門学校などで指導しながら、学生達がせっかくのシンセサイザーを全然活かしていないと常に感じていたそうです。そこで、既成の音だけではなく、オリジナルの音を作り出すための解説書を作ろうと考えました。しかし、それにはシンセサイザーの基本も知っていなくてはならない。そこで、歴史や仕組みもと書き進むうちに、基礎知識まで含めた総合解説書ができあがりました。シンセサイザーの歴史を解説する部分では、往年の名機を所有する各機関や電子音楽の名だたる作曲家にもご協力を仰ぎ取材や撮影をさせていただきました。そうこうしている間にもシンセサイザーはどんどん発展を続けています。できるだけ新しい情報を盛り込むと同時に、新しい時代になっても変わらない基本的な部分を、できるだけわかりやすく解説した1冊となりました。
在庫あり
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