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文化を楽しむ出版社

【第11回】ダニエル・ハーディング指揮マーラー・チェンバー・オーケストラ金沢公演

 2011-06-25   ,

ダニエル・ハーディング指揮マーラー・チェンバー・オーケストラ金沢公演

    日時:2011年6月10日(金)19:00開演
    会場:石川県立音楽堂コンサートホール
    指揮:ダニエル・ハーディング
    演奏:マーラー・チェンバー・オーケストラ
    曲目:
      ブラームス:交響曲第4番ホ短調 Op. 98
      ブラームス:交響曲第1番ハ短調 Op. 68

大都市を中心にツアーをしているハーディングとマーラー・チェンバー・オーケストラが、北陸では唯一、石川県立音楽堂で公演を行いました。ブラームスの交響曲を2つという、意欲的な選曲です。

最初に演奏された交響曲第4番、第1楽章は、滑らかに、そして叙情的に流れます。しかし力点が置かれている再現部へ入ってからは次第にぐいぐいと聴衆を引き込んでいき、猪突猛進の集結部へとつながる後半の間断なき楽想の流れに圧倒されます。第2楽章は、精密なアンサンブルが随所に立ち現れ、小さな合奏や独奏楽器の音色に聴衆は魅了されていきます。一方、大きなスケールで聴かせる弦楽合奏には、大海を見るようなヴェールが舞台上に形成され、アンサンブルの強さが圧倒的に生きていました。ブラームスの交響曲らしい、粗削りの魅力を包み隠さず伝えるスケルツォに続き、最終楽章のパッサカリアは単なる変奏曲ではなく、中間部のフルート独奏はテンポをかなり自由に捉え、歴史主義的ロマン派交響曲における詩情豊かな揺らぎを伝えていました。

オーケストラの醍醐味を余すところなく伝えるハーディングですが、あの必要最低限に振るタクトからは見えてこないうねりが音楽にありました。リハーサルにおいて、どのようなやりとりがオーケストラ団員との間にあったのか、関心を持たされます。そして久しぶりに、魂をどこかに持って行かれてしまいそうな演奏体験をしたように思います。呼吸の取り方して、日本人の演奏家とは違うというのは、常々感じていることではありますが、改めて実演に接し、認識を新たにしました。

作品そのものの性格もあると思うのですが、第1交響曲の重厚な序奏部に続いて放たれた舞台上の音楽展開は、第4に比べてリラックス・モードだったといえるでしょう。ただ、艶やかな弦セクションの輝きが第2楽章には溢れていましたし、第3楽章は、不思議と、この交響曲における民族性ということが気になる内容でした。フィナーレは、第4交響曲とは違った奔放さをここでも交え、苦労して書かれた当作品に未だに失われていない青年ブラームスの輝きを提示し、爽快な響きを残して会場を盛り立てました。

アンコールには第2交響曲から第3楽章。このまま最終楽章までも聴きたくなるような余韻が残りました。この金沢で、ブラームス演奏のスタンダードにしてもよい、素晴らしい演奏に出会ったことは幸せだったといえるでしょう。

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