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文化を楽しむ出版社

【第9回】ラ・フォル・ジュルネ金沢 「熱狂の日」音楽祭2011:ウィーンのシューベルト

 2011-05-15   ,

  • ラ・フォル・ジュルネ金沢 「熱狂の日」音楽祭2011:ウィーンのシューベルト
    熱狂の日 in 富山 [富山公園]
    青島広志のウィーンのシューベルト
  • 2011年4月27日 (水)
    富山県民会館 (大ホール)、19:00開演
  • 指揮、ピアノ、お話:青島広志
    ピアノ:田島睦子
    演奏:オーケストラ・アンサンブル金沢メンバー(第1ヴァイオリン:坂本久仁雄、トロイ・グーギンズ :第2ヴァイオリン、ヴィオラ:石黒靖典、チェロ:大澤明、コントラバス:今野淳)


「連れ合いが行かなくなり、チケットが余ったので、行きませんか」と知り合いから声がかかり、富山県民会館で行われた上記公演に、雨の中、急きょ駆けつけることになった。

入りはおおよそ半分といったところだろうか。まだ公演が始まる前のこと。青島広志さんが「前の方にくるように」と着替える前に客席までやってきて、マイクを使わずに呼びかけられていた。司会でこういうことをやる人は初めて見た。

おそらく公式には、青島さんの進行によるコンサートという構成になっているという思うが、実質的には音楽付きのトーク・イベントという印象も強かった。それだけ青島さんのトークは人を惹きつけるものがあるということだろう。最初から最後まで、「〇〇なのね」という口調で通していた。若干早口ながら、笑いのツボを押させていらっしゃり、石川県立音楽堂で口下手な「プレトーク」などをやった私自身の経験からすると、ほんとうにおしゃべりがうまいなあと感心するばかり。

そのおしゃべりの内容も、曲の形式的な解説となると眉唾を付けたくなる箇所もある一方で、作曲家を取り巻く音楽環境や作曲家の生涯については、それほどハズレてないところを押さえていたりして、さすがによく勉強していらっしゃると思うところもあった。彼の語りは、もしかして子どもたちよりも、一緒に来たお母さんたちにとっての方が興味深く聴けたのではないだろうか。

オーケストラ・アンサンブル金沢のメンバーで構成された5人の演奏家は、リラックスしながら、一方で名だたる名曲だけに、一定のプライドを持ってらっしゃったと思う。曲目はモーツァルトの《アイネ・クライネ・ナハトムジーク》第1楽章から元気に始まり、ハイドンの弦楽四重奏《ひばり》の第1楽章、モーツァルトの《きらきら星変奏曲》 (青島さんピアノ。弦楽四重奏と共演するためのアレンジも?) 、ベートーヴェンの《エリーゼのために》、ゲストの田島睦子さんとはシューベルトの《軍隊行進曲》を連弾。田島さんはさらに《ます》の第4楽章でOEKメンバーと共演。

《キラキラ星変奏曲》、《エリーゼのために》では青島さんのピアノも聴けた。音を外すことは少ないけれど、なんとも無頓着にやっつけてしまうところもあり、作曲家のピアノだからで許しちゃっていいのかな。ゲストとして登場したピアニスト田島睦子さんのピアニズムは、やっぱり繊細。

音楽会全体としては、子どもたちを連れてきたお母さんに、とても受けているようだった。また、ほどほどの長さで終わる音楽で、飽きずに最後まで楽しまれたのではないかと思う。出演者の中では、チェロの大澤明さんは地元富山のご出身でもあるし、よい音楽を届けたいという使命も感じられていただろう。

そしてこのコンサートは、さり気なく青島さんの作品発表の場でもあったりする。コンサートの最後はビートルズの主題によるソナチネ。僕は青島さんの合唱作品を大学時代に歌ったことがあるのだけれど、それを思い出させるような、とってもユーモラスで手の込んだアレンジ。「それで、シューベルトはどうなったの?」というツッコミを入れる暇もなく、うまく丸め込まれ、演奏会は湧き上がる拍手の中で終了した。

青島さんは演奏会が終わると、すぐ出口の著作販売のところに走り、名調子で「営業」をされていた。イラストも手がけていらっしゃるのだし、不器用な私は、多才な青島さんはすごいなあと素直に感嘆するのであった。

クラシックに長く接していると、いわゆる「世俗名曲」に縁遠くなりがちだけれど、このコンサートをきっかけに、楽しくクラシックの世界に入っていけたという人が一人でも多くいたことを願いつつ帰宅した。

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