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文化を楽しむ出版社

【第5回】金沢歌劇座の《トゥーランドット》

 2009-09-01   , ,

 2009年7月18日、金沢歌劇座にて、プッチーニのオペラ《トゥーランドット》が上演されました。昨年の《カルメン》、《ラ・ボエーム》につづく、第3弾ということになります。

 今回は金沢と東京の2回公演という企画で、歌手は2公演を通して出演し、そのほかを独立したキャスティングにするという方法で行われているようです。金沢公演のオーケストラは、当然、オーケストラ・アンサンブル金沢です。

 歌手陣では、なんといっても主役の2人の存在感が光っていました。トゥーランドットは、容赦せずに音楽を鳴らすOEKを越えて聞こえてくるツヴェトコヴァが圧倒的で、会場を空間的・心理的にしっかりとつかむ力強さがありました。カラフ役のバディアも、存在感があり、貫禄ある振り付けも、堂に入っていました。

 舞台は階段状になっていて、それがずっと最初から最後まで使われていました。合唱は下手側にずっといて、残りの上手半分で、主要人物が相対峙するように考えられていました。《トゥーランドット》は、大スペクタクルが印象的なオペラというイメージがありますが、この舞台は、もともとオペラ向きではない舞台 (金沢歌劇座というのは、金沢市観光会館という多目的ホールを改称したものです) を有効に活用する方法といえるのかもしれません。とはいえ、音楽の持つスペクタクル性 (井上道義指揮オーケストラ・アンサンブル金沢の鳴りっぷりの良さ) とは裏腹の、筋のシンプルさを表出させたものという評価は充分可能でしょう。

 《トゥーランドット》おいて、合唱は、最初から最後まで継続的に音楽を彩り、ドラマ作りに一役買っておりますが、演出的には扱いが難しいと思います。大きな舞台スペースがあれば、一人一人に細かな演技をさせることも可能で、例えば昨年、オーバード・ホールで行なわれた《ラ・ボエーム》の第2幕では、パリの街の賑わいが、舞台上の一人一人の動作によって表現されていました。

 セミ・ステージ形式による《トゥーランドット》では、逆に思い切って、動作を制限していたといえます。合唱団の大半は白装束であり、儀式的な雰囲気を醸し出すと同時に、スクリーンも使って細かに切り替えられる照明の色彩も、敏感に衣装に反映されます。また必要なメンバーのみがすくっと立ち上がって歌ったり、必要な最小限の動作のみをきちっと行なうことにより、演出上の必然性のある動作に、自然に視線が向けられるようになっていたといえます。

 私のトータルな印象は、一言で「よくやりました」ということです。こういった上質の公演をずっとやっていくことが、長い目でみて、音楽文化の育成ということになると考えているからです。富山のオーバード・ホールのようなオペラ・ハウスで行なう「本格派」とは違った魅力が溢れた公演でした。北陸のオペラ上演史という文脈では、歴史的・画期的と言わざるを得ません。

プッチーニ 歌劇《トゥーランドット》(セミステージ形式)

井上道義指揮オーケストラ・アンサンブル金沢
演出:茂山千之丞

トゥーランドット:マリアナ・ツヴェトコヴァ(ソプラノ),皇帝アルトゥム: 鈴木寛一(テノール)、ティムール: ジョン・ハオ(バス)、カラフ: アレクサンドル・バディア(テノール)、リュー: 小林沙羅(ソプラノ)、ピン: 萩原潤(バリトン)、パン: 与儀巧(テノール)、ポン: 牧川修一(テノール)、役人: 小林大祐(バリトン)、ペルシャ王子:中村順一、プー・ティン・パオ:風李一成、ダンサー:伊津田愛
合唱:金沢カペラ合唱団(合唱指揮:山瀬泰吾)、児童合唱:OEKエンジェルコーラス(指導:山崎陽子,清水志津)

舞台監督:黒柳和夫(金沢舞台)、照明:伊藤雅一、衣装制作:金沢文化服装学院,小道具制作:金沢美術工芸大学

演奏者等については、以下のサイトから引用しました。
OEKfan:オーケストラ・アンサンブル金沢を応援するページ

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