スタイルノート

文化を楽しむ出版社
 グローバル・コミュニケーションへのいざないアラブの音文化

アラブの音文化 グローバル・コミュニケーションへのいざない

西尾 哲夫 編著, 水野 信男 編著, 堀内 正樹 編著, 新井 裕子, 飯野 りさ
A5判 / 304ページ / 並製
定価: 2000円 + 税
ISBN978-4-903238-41-8 C1039
[2010年02月 刊行]

内容紹介

 「音文化(おんぶんか)」という考え方は、音が作り出すコミュニケーションを「音楽」という狭い枠から解放して、自然音や聴覚以外の諸感覚、身体性などと係わらせて理解すること、および音のコミュニケーションを社会や政治、歴史の脈絡のなかでとらえ返すことを見据えています。つまり、音のもつ身体文化的豊饒性を解き明かすこと、および、音が有する社会造成能力を見極めることが、「音文化」という概念の使命であり、それを13人の著者それぞれが、応用・発展させた成果が本書です。

 アラブ世界の文化を、グローバル・コミュニケーションという独自の視点に立って、ヨーロッパとの関係にも目を配り、「音」の次元から考察した斬新な内容となっています。扱われる範囲が、歴史、伝統、理論、演奏、地域性、宗教、言語等におよぶと同時に、古典音楽から、儀礼や現代のポップ音楽やダンスについても幅広く論じられている点が特徴です。音楽に対する固定概念を解き放つ、斬新かつ気鋭の論集です。最終章には内容の理解を深めるための座談会も収録しました。

受賞


本書は、2011年の第28回 田邉尚雄賞〈(社)東洋音楽学会〉を受賞しました
受賞理由は以下の通りです。

 本書は、音によるコミュニケーションの力をアラブの社会的・歴史的文脈で捉え、13名の著者がそれぞれの専門研究の立場から論じたものである。アラブの音文化に関する日本語文献がほとんどない現状において、本書の学会への貢献は貴重である。特に注目すべきは、本書がアラブ音楽の紹介や解説にとどまることなく、言語も音楽も多様な中で共通の価値基準や感受性がどのようにはぐくまれるのか、という独自の視座で問題設定を行い、この問題意識を巻末の座談会を含め、総ての執筆者が共有した上で、本書の全体を貫いている点である。この研究方法は、今後の共同研究や共著書のあり方に、重要なひとつの方向性を示すものとして評価できる。

目次

はじめに(堀内正樹)

第1章 真正な音をもとめて
 アラブ音楽会議でバルトークは何を聴いたか?(水野信男)
 「古典トルコ音楽」とは何か(斎藤完)

第2章 音のしくみ
 中世イスラームの哲学者たちが語る音楽論(新井裕子)
 アレッポの伝統に基づく東アラブの古典的マカーム現象入門(飯野りさ)
 都市に伝わる歌唱形式「イラキマカーム」(樋口美治・樋口ナダ)
 アンダルシア音楽のしくみ(堀内正樹)

第3章 音からからだへ
 共有されるマカーム美意識—アレッポの事例(飯野りさ)
 声が運ぶ聖典クルアーン(小杉麻李亜)
 近・現代アラブ歌謡二人のディーヴァ—レバノン的な音楽文化(青柳孝洋)
 儀礼における身体技法とその展開—トルコ・アレヴィーのセマー(米山知子)
 ベリーダンスを踊ると体が笑う—アラブから世界へ(西尾哲夫)

第4章 音のかたち
 「個性」はいかに研究可能か(記述可能か)?—イラン音楽を事例とした一試論(谷正人)
 アンダルシア音楽を計量する(小田淳一)

第5章 座談会
 座談会1 アラブ音楽入門—マカームとは何か? イーカーウとは何か?
 座談会2 中東の近・現代音楽をめぐって

 おわりに(水野信男)
昨今のグローバリズム論が出発点に据える、19世紀以降の近代西欧の世界進出はその決定的な契機となっているわけでは決してなく、それに先立つ約千年もの長きにわたる三大陸とその周辺島嶼部の都市化と国際化のプロセスこそ「先発・本流のグローバリズム」と呼ぶべきで、そのプロセスを支えるコミュニケーション形態として、この音の伝統は展開してきたのだということが、そして、後発の西欧発の政治・経済的グローバリズムが今日対話の機能不全を招来して悲惨な問題を多発させているのとは対照的に、アラブ音楽を下支えしてきた声と音からなる生活の総体つまり「アラブ世界の音文化」は、「先発・本流のグローバリズム」によってネットワーク状につながった世界各地のさまざまな音文化とリンクしあいながら、人々の異質性や多様性や雑種性を当然の前提としつつ、移動し混在しあう人々のあいだの対話を促して、広い世界を結びつけているのだということに気づかせてくれる1冊です。
西尾 哲夫(ニシオ テツオ)

京都大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(文学)。人間文化研究機構国立民族学博物館教授。総合研究大学院大学教授

水野 信男(ミズノ ノブオ)

東京藝術大学大学院音楽研究科修了。博士(文学)。兵庫教育大学名誉教授

堀内 正樹(ホリウチ マサキ)

東京都立大学大学院社会科学研究科社会人類学専攻博士課程満期退学。文学修士。成蹊大学文学部教授

新井 裕子(アライ ヒロコ)

お茶の水女子大学大学院人文科学研究科修士課程修了。文学修士。放送大学、東京外国語大学非常勤講師を歴任

飯野 りさ(イイノ リサ)

東京大学大学院総合文化研究科単位取得退学。シリア・アラブ共和国アレッポ市にてムハンマド・カドリー・ダラール氏により伝統歌謡ムワッシャフの伝承指導を受ける。東京大学東洋文化研究所技術補佐員

樋口 美治(ヒグチ ヨシハル)

成蹊大学文学部卒業。イラク共和国文化情報省古典音楽院(マアハド・アルディラーサート・アルナガミーヤ)留学。オマーン王国情報省オマーン伝統音楽センター研究員として、オマーン、ザンジバル、ケニア海岸部、コモロを中心としたアラブ湾岸地域と東アフリカ海岸地域の音楽文化を調査研究。バルカン、コーカサス、中央アジアの音楽文化を数多くのフィールドワークを中心に調査研究

樋口 ナダ(ヒグチ ナダ)

バグダード大学芸術学部音楽科卒業。イラク共和国文化情報省古典音楽院に学ぶ。イラク共和国文化情報省古典音楽院講師(アラブ音楽基礎研究論)を歴任

小杉 麻李亜(コスギ マリア)

立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程修了。博士(学術)。日本学術振興会特別研究員(PD)

青柳 孝洋(アオヤギ タカヒロ)

University of California, Los Angeles。PhD (Ethnomusicology)。岐阜大学教育学部准教授

米山 知子(ヨネヤマ トモコ)

総合研究大学院大学(国立民族学博物館)修了。博士(文学)。神戸学院大学地域研究センター・PD研究員

斎藤 完(サイトウ ミツル)

東京藝術大学大学院音楽研究科博士課程単位取得退学。修士(音楽)。山口大学教育学部准教授

谷 正人(タニ マサト)

大阪大学大学院文学研究科博士後期課程(音楽学)修了。博士(文学)。神戸学院大学人文学部芸術文化コース専任講師

小田 淳一(オダ ジュンイチ)

筑波大学大学院文芸・言語研究科各国文学専攻博士課程単位取得退学。文学修士。東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所准教授



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