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文化を楽しむ出版社

忘れ去られた王国 落日の麗江 雲南滞在記 FORGOTTEN KINGDOM

ピーター・グゥラート, 西本 晃二 訳,
A5判 / 456ページ / 上製
定価: 3600円 + 税
ISBN978-4-7998-0131-4 C1026
書店発売日:2014年12月05日

内容紹介

チベットやインドとの商業・流通の拠点として栄えた中国・雲南省、麗江。1940年代の雲南には多くの少数民族が集まり、小さな王国も多数あった。そこには独自の習慣、風習、儀礼、音楽、生活があった。ロシア生まれの旅行家・探検家・著作家、ピーター・グゥラートによる中国・雲南省、納西族の地、麗江での滞在記が本書である。「辺境の暗黒地帯」とまで言われていた雲南省、麗江に自ら望んで赴任。その地にとけこみながら過ごした10年にわたる滞在記。著者がそれまで経験したことのないさまざまな文化に出会うが、決して、観察者としてではなく、そこに暮らす住人として、人々と交流しその様子を記録した文章を、訳者ならではの生き生きとした日本語で描き出した。当時の様子を記録した写真や、文中に登場する人物の写真も収載。当時の複雑な文化的、政治的背景や民族の事情などの詳細な注も付した。

目次

はじめに

第一章「麗江に到るキャラヴァン旅行」
 大馬街での一夜/剣川と民家族/アクーニャの家での晩餐/崩廟

第二章「麗江」
 麗江での住居/お化けやしき/町への道/大通り/通貨/麗江の王族/紳士的な豚/納西族の警戒心/友情/楊氏の死

第三章「麗江の市場と酒場」
 高級酒場/マダム李/酒場での縁/マダム楊の酒場/阿托里人/お転婆娘達/麗江のナイト・ライフ/マダム和の酒場/呂喜族/呂喜族の美女

第四章「さらなる前進」
 納西族の性格/納西族の農家訪問/茸についての講釈

第五章「協同組合のスタート」
 協同組合設置基準/金融上の問題/良好な結果と成功の承認/監視の必要性

第六章「医療」
 患者の殺到/甲状腺腫と癩病/病に冒された地上楽園/他の病気と、それに対する治療

第七章「納西族」
 納西族の女商人/仕合せな社会/神学論争/納西族の信仰

第八章「チベット(蔵)族」
 キャラヴァン大作戦/カムとその住民康巴/盗賊跳梁地帯/東旺の色男/東旺の経済システム/陽気なラマ/郷城の女公爵/ラサ王宮の侍従/正真の王宮晩餐会/小公子の死/ネーマの使命/女王陛下の御来臨/男前の兵士の提案

第九章「崩族、ロロ族と民家族」
 原始的部族の客人達、去り行く者達と脚光を浴びて登場してくる部族/気高いロロ族/白ロロ族/生きた中世社会/ロロ族の家畜と農産品/阿片密売人/ロロ族の患者/民家族の職人芸/民家版『椿姫』

第十章「ラマ教寺院」
 神々の御座/ラマ教寺院での週末/素晴らしい儀式/新たに得度したラマ達/東巴儀礼/道教

第十一章「天邪鬼」(あまんじゃく)
 精霊との交信/お告げ/呪いが丘

第十二章「自殺および『東巴』儀礼」
 納西族の結婚制度/心中の約束/海拉里克の儀礼/死者の参詣/不幸な結婚の悲劇

第十三章「婚礼さまざま」
 婚礼のお祝い/田舎の結婚式/婚礼のダンス/山間部の納西族の結婚/黒リス族の女男爵

第十四章「麗江のお祭り」
 子宝祭り/御先祖崇拝/打ち上げ風船/火把節

第十五章「納西族の音楽・芸術と余暇」
 名将にして、かつ音楽家/黄金の旋律/麗江における時と美の観念

第十六章「協同組合事業の進展」
 鉄鋼採掘組合への旅/黒白水の呼び声/臆病者の苗族/上納則への登頂/活気に満ちた若手の靴職人達

第十七章「鶴慶の馬賊」
 侵略の脅し/抗戦体勢確立/勝利/謎の改革者達

第十八章「麗江最後の日々」
 豊穣祭/解放/様変りした麗江/出立のための準備/雪山の怒り

解題

ひとこと

この本は、いまから75年前(第二次世界大戦終戦の前後5年間)の中国・南西部、雲南省・麗江の様子を描いたものです。古くから多くの少数民族が王国を築き、また、インドやチベットと中国の商業・流通の拠点として多様な人々が行き来するこの地には、独特の文化が育まれました。その後の、国共内戦で、中華民国政府側の活動をしていた著者はこの地を追われ、中国共産党が迫るギリギリのところで空路脱出します。後年本書を執筆する際に、この王国は永遠に消え去ってしまうだろうと、本書のタイトルを「FORGOTTEN KINGDOM(忘れ去られた王国)」と名付けました。せめて、本の中には麗江のことを残しておきたいと願ったに違いありません。
ところが、1997年、麗江旧市街は世界遺産に登録されました。忘れ去られるどころか、世界中から観光客がやってくる場所となったのです。もっとも、観光地と化すことで古き良き時代の様子は失われつつあるようで、再び「忘れ去られ」つつあるとも言えます。
本書内では、麗江に突然現れた西洋人に驚く人々の様子や、仲良くなった人々のことなどが細かく書かれています。馴染みの飲み屋が出来たり、西洋人が来たからと呼びつける貴族がいたり、結婚式に招待されたりと様々な体験をしていきます。時には、ポルターガイスト現象などの不思議な経験もします。さらに、当時の街の様子や風景などの写真が掲載されているだけでなく、ここに登場する人物本人の写真も掲載されています。人々の生活や会話がありありと描かれている、どこか懐かしい、古き良き中国・雲南の様子がぎっしりつまっているのがこの本です。
翻訳は、東京大学名誉教授の西本晃二氏。多くの著書、翻訳書を生み出している氏ならではの文体も魅力的です。決して直訳では無い、読ませる文章を楽しめるでしょう。
さらに、当時の複雑な文化的、政治的背景や民族の事情など、細かな注も付けたので、当時の中国の地方がどのような状況だったのかを知るにも最適な1冊です。

著者プロフィール

ピーター・グゥラート(ピーター・グゥラート)

20世紀初頭、モスクワの裕福な家庭に生まれる。ロシア革命で祖国を追われ、中国へ渡りアメリカン・エキスプレスのツアー・コンダクターとして、中国、日本、インド・シナなどを巡る。第二次世界大戦勃発を機に「中国殖産協同組合」に加わり、重慶を中心に協同組合活動に参加する。その後、昆明にある雲南省協同組合本部に赴任し「辺境の暗黒地帯」と言われていた、麗江の協同組合物品管理事務所長に就任。麗江の地で10年にわたり地域の人々の生活にとけこんで過ごす。中国における国共内戦が中国共産党の勝利に終わり、協同組合活動への監視が厳しくなったため現地を脱出。以後はシンガポールで過ごす。1978年没。

西本 晃二(ニシモト コウジ)

1934年奈良県生まれ。東京大学文学部卒、同大学院博士課程修了。ラヴァル大学(カナダ)博士課程修了(Ph.D.)。ソルボンヌ大学(フランス)博士課程、ローマ大学(イタリア)大学院修了。文学博士(東京大学)。ヴィクトリア大学(カナダ)客員助教授、ナポリ大学(イタリア)客員教授、東京大学教授などを勤めた。東京大学文学部長、在ローマ日本文化会館館長、政策研究大学院大学副学長、早稲田大学社会学部国際言語文化研究所招聘研究員などを歴任。東京大学名誉教授。
 著書に、『ルネサンス史』(東京大学出版会)、『モーツァルトはオペラ』(音楽之友社)、『落語「死神」の世界』(青蛙房)、『イタリア文学史』(編著、東京大学出版会)、『新講現代のフランス語』、『新講現代のイタリヤ語』(共に三省堂)など。
 訳書に、ランぺドゥーザ他『南欧怪談三題』(未来社)、ジョヴァンニ・ヴェルガ『マラヴォリヤ家の人びと』、ジャン・ルノワール『ジャン・ルノワール自伝』、ジャンバッティスタ・ヴィーコ『ヴィーコ自叙伝』(共にみすず書房)、アンドレ・ブークーレシュリエフ『ベートーヴェン』(白水社)など。


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